はらぺこタヌキのらくがき帳

詩を書く練習をしています。

続きがある 歩け 歩け

終わりだなんて誰も言っていない
だから続きがあると決めることにした
道は確かに真っ暗で先が何も見えないけれど
踏み場はあるし単に見えないだけだ
止まるな足 歩け 歩け
見限るな頭 見えない可能性に向かって進め


そこに道があることを信じて
見えない先に一歩を踏み出せ
秋は冬へ 冬は春へと向かう
逆はない
終わりだなんて誰も言っていない
だから続きがあると決めることにした
あなたの憂鬱の先に
僕の悲哀の先に
再び晴れやかな心持ちがあることを祈って

鼓動

孤独の時間が長すぎて
立ち上がり方を忘れてしまった
だけど昨日からずっと
鼓動が続いている


どうかそこへ行かせて下さい
君が羽で飛ぶなら
僕は這って転げよう
鼓動が続いている


死んでいた体に
血が通い始めて
目には光が戻って
僕の生活に鼓動が生まれる


どうか前に行かせて下さい
あなたの言葉が僕を変え
僕の捨て身が君を震わせ
鼓動が続いている

あなたの声だけが聞こえる

目の前で起きたことの意味も解らず
僕はただあなたの鼓動を知った
昨日と今日との違いも解らず
僕はただあなたの微熱を知った
昔のことを思い出しながら
これから先をぼんやり浮かべて
混乱している頭の中
あなたの声だけが聞こえる
遠ざかる大切な全てが
あなたの声だけが聞こえる
壊したものを思い出しながら
小さな希望をぼんやり浮かべて
ぐしゃぐしゃに渦巻く心の中
あなたの声だけが聞こえる
思い出と罪を掻き回して
あなたの声だけが聞こえている

あぶく

曲線とか
高い声とか
薄紅色の頬とか
手をつないだり
笑い合ったり
あなたがここにいるということ
ふわふわした
キラキラした
柔らかい幻想のような
クジラが空を飛ぶよりもっと
リンゴの雨が降るよりもっと
鮮烈な触覚のような


それはあぶくだった
退屈な世間が吹聴した虚妄の灯
それはあぶくなんだ
否定すべきものでもなく
肯定すべきものでもなく
それはただ たやすく壊れるあぶくだということ

悲壮で空虚な思索

生きるのに飽きてくると
何の根拠もないのに
「なんかもう死ぬかもしれない」と
よく思うようになる
死ぬことを考えると
鬱になったり躁になったりしているうちに
こんなことを考える
自分勝手に 無軌道にじゃなくて
もっと自由に生きたい
自分が無意識に作った制限を破って
法には忠実に
もっと素直に ありのままに 思うままに
身近な所から できることから
前向きに 健気に
それが人間らしさじゃないかと思う


いつ死んでもいいように
今死んでもいいように
悔いなく今を生きよう
そんな決意をして
明日も嫌な職場に通えたら
今日も地域のために働くぞと
ニコニコしていられたら
心無い罵声を浴びせられても
自分は今を精一杯生きるんだと
顔を上げられたら
すごく素晴らしい一瞬だと思うんだ

酵素

気が狂いそう
努力無しで手に入れられたものが
次々消えていき 両手からこぼれ落ちていく
子供の僕が欲しかったものは
きっと周りの人をみんな
笑顔で大騒ぎさせるもの全部
それが何になるのかなんて知らない
それに何の価値があるのかなんて知らない
酵素澱粉を糖に変えるみたいに
法則や性質みたいに僕はただそれを周りに与えたい


笑顔を見せて下さい


できないと
絶望で気が狂いそうになるから
ずっと抑え込んで
うつ病のふりをしていたけれど
見栄を張るのはやめよう
ただ澱粉を糖に変えたいだけ
もう一度
酵素になってみようか
バーンアウトしたら
舌を噛み切って死んでやる
笑顔を見せて下さい

一文

本で目にした一文が
腹を刺し 頭を刺し
心臓を刺すことがある
刺された穴から意志が芽生え
空っぽだった心に
取って代わることがある
それが今日
それが今
一文を書いた主は僕の師となり
気狂いの日々を塗り返し始める
悲哀の過去は契機となり
夕暮れ時に僕は朝日を見る