はらぺこタヌキのらくがき帳

詩を書く練習をしています。

かばん

空っぽのかばんに貼り付いている
一枚の小さなもみじ
触れているあたりを赤く染め
冷たい風を呼んでくる


かばんの中には映像が流れる
見覚えのある笑い顔や
どこかで見た泣き顔や
おぼろに何度も繰り返す


にわか雨が降り出して
かばんの中は掻き回された
突風が吹いて
小さなもみじは飛ばされた


ほんの少し前に気付いたら
雨宿りに走ったろう
ほんの少し早くわかったら
手の中に押し込んだろう


突き破るような
激しい鼓動に息を殺す
やり切れなくはないけれど
かばんが千切れそうだ


黙っていてくれ、風の音
耳から離れない風の音
打たないでくれ、雨の群れ
滴り続ける雨の群れ