歩く
道端で拾った小さな緑の小石
宝石か何かわからないけれど
気に入ってポケットにしまった
手に取って眺めて
光に透かして
はしゃいでいたほんのひと時
空から金貨が降ってくるかと思い込んだ
地面がケーキになったかと見間違えた
通行人に殴られ
マンホールに転げ落ち
突然の雨に降られ
気が付けば目の前には夕闇
僕は立ちすくむ
立ちすくんで
自分を見失って
意識が遠のいて
ふいに感じる不変の静寂
ポケットの中に石があるのを確かめる
金貨やケーキは単なる幻覚で
目の前にはさっきまでの景色
両手で顔を叩いて
何度も叩いて
また歩く